「酒蔵ツーリズム」とは、日本酒やSAKE、ワイン、ビール、焼酎、蒸留酒など、日本で製造されている酒を軸に食、体験、自然景観など、その土地ならではの多様な魅力を組み合わせて楽しむ旅だ。酒蔵という「点」ではなく、「線」も超えて、「面」で楽しんでもらう酒旅を提案する動きが、新潟の地で動き出した。

「酒蔵ツーリズム」という言葉は、2013(平成25)年に佐賀県鹿島(かしま)市が商標登録している。
鹿島市には日本酒蔵が6蔵(5社)あり、2011(平成23)年に「鍋島(なべしま)」の銘柄で知られる富久千代酒造がIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンンジ)で最高賞のチャンピオン・サケを受賞したことをきっかけに、日本酒を活用したまちづくりへの模索が始まり、2012(平成24)年に鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会が発足。
同年には蔵開きを中心とした「第1回鹿島酒蔵ツーリズム」が開催され、2026(令和8)年3月28日・29日には15回目を実施予定だ。
当初は鹿島市単独の取り組みだったものが、隣接する姫野市の酒蔵との連携や二次交通の整備、他のイベントとの同時開催と、回を重ねながら大きなイベントへと成長し、定着。
2025年の2日間の来場者数は鹿島市と姫野市合わせて約10万人とのこと。鹿島市の人口の約3倍にあたる。
全国一の酒蔵数(現在県酒造組合登録の酒蔵は91社)を誇る新潟県でも、2025年10月に「新潟酒蔵ツーリズム推進協議会」が発足した。
設立記念講演会では、佐々木酒造(京都市)社長の佐々木晃さんが「京都洛中酒蔵ツーリズムの取り組み」と題し、観光地にある酒蔵ならではの連携を強みに、アイディアあふれる事例を紹介してくれた。
新潟酒蔵ツーリズム推進協議会では、これからさまざまな形でにいがた流の酒蔵ツーリズムを形にし、発信していく予定だ。
酒蔵数とともに、新潟県には世界に誇れる日本酒イベントがある。2026年3月7日・8日に開催される「にいがた酒の陣」だ。
2004(平成16)年2月に県酒造組合50周年事業として、朱鷺メッセを会場に初開催され、94蔵が集い、約5万人が来場した。2018(平成30)年には2日間の延べ来場者数は14万人を超えた。
2020(令和2)年からコロナ禍のため中止されたが、2023(令和5)年に4年ぶりに開催。これを機に、スタイルも完全入れ替え、定員制に変更。

2025年の様子
2026年は1日2回、各回5000名定員で、82蔵が参加する。
チケット入手は狭き門だが、チケットが買えなかった人でも新潟の酒と食を楽しめる企画が、酒の陣とコラボで開催される。
3月1日~31日まで実施される「新潟酒月(にいがたさかづき)」だ。新潟県内150の飲食店でオンラインクーポンによる特典が利用できる。

写真はイメージです
地元の人はもちろんのこと、イベントに参加できなかった県外の人も、3月中にこの企画への参加も含めた新潟の酒を楽しむ旅へ、ぜひ出かけてほしい。
新潟酒蔵ツーリズム推進協議会では「にいがた酒の陣」に合わせて、3月7日と8日の午前中~昼にかけて、タクシーで新潟市の酒蔵を訪ね、フレンチ鉄板のランチを楽しむ「新潟酒蔵美食ツアー」を企画している。交通の心配なく、酒蔵と食を堪能できるツアーだ。

高野酒造の直売所「KULABO」

KULABOの2階からはガラス越しに瓶詰の作業を見学できる

ランチは「フレンチ鉄板 静香庵」でステーキを味わえる
申し込み〆切は3月2日。酒の陣に参戦する人も、しない人もチェックしてみよう。
申し込み・問い合わせはTEL.050-2807–4900または FAX.025-247- 5213 へ。
「SAKE TOPICS」ではこれまで、「にいがた酒旅のススメ」として、2021年の長岡市編から始まり、三条市・加茂市・弥彦村・新潟市、佐渡市、糸魚川市、小千谷市・魚沼市・南魚沼市・湯沢町・十日町市・津南町、村上市・新発田市、柏崎市、阿賀野川ライン(五泉市・阿賀野市・阿賀町)、上越市、妙高市と、県内の酒蔵がある21市町村をめぐる旅をご紹介してきた。ぜひ酒蔵ツーリズムの参考にしてほしい。
県内各地の特色を生かした食を、酒とともに堪能できるのは、にいがた流の大きな魅力だ。

「のっぺ」などの郷土料理はもちろん、クオリティの高い食材を生かした通年味わえる料理から、初夏から晩秋まで楽しめる多品種の枝豆、秋限定の村上市の鮭のフルコース、旬の野菜や果物を使った料理など、その季節にしか味わえないものと酒とのペアリングを目的に、新潟の地を訪ねてほしい。



雪国新潟ならではの、雪の恩恵を生かした酒と食を雪景色とともに味わえば、さらにそのおいしさが増すだろう。


雪室を見学し、そこで育まれた食や酒を楽しむ雪尽くしのツアーも新潟ならば可能だ。
新潟市中央区の「発酵の町 沼垂(ぬったり)」や西区~西蒲区の「発酵街道」、長岡市の「醸造の町 摂田屋(せったや)」など、すでにツーリズムを意識した酒エリアもある。
これらのエリアの巡り方やストーリーの伝え方、そこへの交通などをブラッシュアップすることで、県内外、国内外からより気軽に訪れることができる酒蔵ツーリズムの地に発展していくだろう。
新潟ではここ数年、春や秋に「蔵開き」イベントを開催する酒蔵も増えてきた。
4月25・26日には、ともに旧北国街道沿いにある新潟市西蒲区の笹祝酒造と新潟市西区の高野酒造が蔵開きを同時開催する。

昨年秋に開催された笹祝酒造の「蔵Be Lucky!」の様子。屋外に食ブースやキッチンカーが出店

蔵開きイベントでは家族で楽しめる企画も用意
昨年秋に開催し好評だった地域イベント「発酵街道開(はっこうかいどうびらき)」の取り組みとのコラボも検討中とのこと。

昨年秋に開催された「発酵街道開」では酒、漬物、パンなど発酵でつながる多数の施設でイベントや体験などを同時開催。写真は笹祝酒造で開催されたトークショーの様子
県内各地の酒蔵のイベントをチェックして、それに合わせて酒蔵ツーリズムを楽しむのもおすすめだ。
食と酒、新潟ならではの自然、伝統の技や工業製品などのものづくり体験、それらを通した新潟県民とのふれあい。これらを巡る交通手段が整備されれば、唯一無二の「にいがた流・酒蔵ツーリズム」が県内各地で、数多に生まれるだろう。
他の地では体験できない旅がリピーターを生む。
新潟を愛し、新潟の素晴らしさを知ってほしいと願う、さまざまな立場の人たちがつながり、「にいがた流・酒蔵ツーリズム」を育てていきたい。
ニール
髙橋真理子