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コラム 2022.02.01

にいがた酒旅のススメ〈小千谷市・魚沼市・南魚沼市・湯沢町・十日町市・津南町編  ①電車旅〉

リアルな酒旅はなかなか難しい昨今、誌上で県内各地の酒旅を楽しみ、コロナ終息後の酒旅プランの参考にしていただくシリーズ。

今回は中越エリアの4市2町にある12の酒蔵を、2回に分けて紹介する。

前編は酒旅の理想形、電車旅で楽しめる5蔵へ。

小千谷の、酒と歴史とへぎそばと

小千谷市の2つの酒蔵、新潟銘醸と高の井酒造は、ともに上越線の小千谷駅から徒歩約6分の場所にある。

小千谷駅前のシンボル、錦鯉モチーフの地下通路。

駅を背にして国道291号を右折し、しばらく歩くと高の井酒造に到着する。

高の井酒造の創業は江戸時代後期。代表銘柄は「たかの井」。

酒蔵の裏手には、みそとしょうゆを製造販売する〈山崎醸造〉がある。1940(昭和15)年に、酒造業のかたわらで新事業として創業。たれや塩こうじ、人気の「南蛮えびの味噌汁のもと」など、多彩な商品を製造している。

高の井酒造では2022年から酒蔵見学が可能になった。約30分間、社員による案内で酒蔵を見学できる。1987(昭和62)年に国内で初めて、酒タンクごと雪に埋め込む雪中貯蔵に取り組んだ発祥の蔵で、貯蔵風景も見学してみたい。今年の埋め込み作業は2月2日に行われた(写真上)。

敷地内の売店も3月にオープン予定だ。

見学は電話にて事前予約、大人500円、子ども(20歳未満)無料。



新潟銘醸1938(昭和13)年創業、代表銘柄は「長者盛」。酒蔵見学はできないが、販売は可能だ。

にごり酒の「冬将軍」や2月から発売される「春もよう」など、季節ごとの限定酒もチェックしよう。

乳酸菌発酵酒粕「さかすけ」の研究にも力を入れており、小千谷市内にある江戸時代創業の老舗割烹〈居食亭 東忠〉とのコラボで、錦鯉が描かれたカップ酒容器に入った、さかすけクッキーも開発。東忠や長岡駅などで販売している。

小千谷市内には、公開が待ち望まれる映画『峠』の主人公、河井継之助ゆかりの地や映画のロケ地もあるので巡ってみたい。

電車の待ち時間は、駅前通りにある〈高留酒店〉へ。

小千谷市東栄1-3-23 Tel.0258-82-2635

小千谷の2つの酒蔵の定番から限定商品、県内各地の地酒が充実。お酒選びに夢中になって、電車に乗り遅れないように気を付けて。

駅前にある〈小千谷そば和田〉で小千谷名物、布のりつなぎの「へぎそば」を味わうのもいい。https://wada-hegisoba.com/

 

鉄道ファン憧れの只見線に乗って

魚沼市の玉川酒造は、小出駅と会津若松駅を結ぶJR只見線の越後須原駅から徒歩約6分。1673(寛文3)年創業、代表銘柄は「玉風味」。

豪雪地の自然の恵みを生かし、通年大吟醸酒を低温貯蔵している見学施設「越後ゆきくら館」がある。酒造りの見学や無料試飲は通常は予約なしで利用できるが、現在は事前に問い合わせが必要なので注意しよう。

近くには江戸時代建築の豪農の館、目黒邸もある。

目黒邸

1日かけて、酒蔵を訪ねた後に再び只見線に乗り、只見まで足の延ばすのもおすすめだ。車窓からの景色を楽しもう。

 

只見駅からタクシーで25分ほどの場所には、地元只見の米で焼酎を蒸留する「日本一小さな蒸留所」〈ねっか〉がある。

現在見学は休止中だが販売は可能。オンライン酒蔵見学は受け付けている。

 

上越線沿線、旧三国街道沿いの酒蔵へ

1717(享保2)年に創業した400年以上の歴史をもつ青木酒造の代表銘柄は「鶴齢」。

製造蔵は、上越線の塩沢駅から徒歩約5分。旧三国街道の雰囲気を再現した牧之通りに位置する。現在では観光スポットとしても人気を集めている。青木酒造では酒蔵見学はできないが、蔵の土間スペースでオリジナルグッズなどを販売。雁木を歩き、歴史を感じるのれんをくぐり、趣ある空間で買い物を楽しみたい。

青木酒造の製造蔵から徒歩約5分、国道17号沿いにある本社敷地内には雪室がある。

見学はできないが、歩道側に説明ボードなどが設置されているので、足を延ばしてみるのもおすすめだ。

青木酒造の雪室(手前)

牧之通りには青木酒造と血縁関係にある『北越雪譜』の著者・鈴木牧之を紹介する〈鈴木牧之記念館〉や、塩沢つむぎの織り体験ができる〈塩沢つむぎ記念館〉などがある。

地元の食文化を知ることができる飲食店やカフェ、物販店も点在しているので、時間をかけて散策してみよう。

川端康成の小説『雪国』の舞台、新潟県境の越後湯沢駅近くにあるのが1855(安政2)年創業の白瀧酒造だ。代表銘柄は「上善如水」。

定番酒以外に、12カ月の月替わりのお酒もあり、季節や味わいを表現したデザインが注目を集めている。見て、飲んで楽しむ、新たな日本酒の魅力に触れてみたい。プレゼントにも最適だ。

白瀧酒造は越後湯沢駅東口側に位置する。現在、酒蔵見学や販売はしていないが、越後湯沢駅構内にある〈ぽんしゅ館越後湯沢驛店〉では、白瀧酒造の定番酒から限定酒までそろっている。

〈ぽんしゅ館〉へ行ったら、やはり体験したいのが唎酒番所の試飲だ。1コイン(500円)5種類の地酒が味わえる。じっくり飲み比べてみよう。

越後湯沢駅西口の目の前にある〈HATAGOいせん〉のレストラン〈むらんごっつぉ〉では、ランチとディナーの雪国ガストロノミーコースで、地酒とのペアリングも楽しめるメニューも用意している。

事前予約してから出かけよう。

 

むらんごっつぉの料理(一例)

越後湯沢駅東口の目の前には、魚沼や小千谷エリアの地酒を厚く販売する〈タカハシヤ〉がある。

こちらにも立ち寄ってみよう。

酒蔵がある土地を訪ね、醸すお酒を味わったり、その酒を大切に販売する店を訪ねることで、雪深い地域の5蔵それぞれがもつストーリーを体感できる。

 

cushu手帖』『新潟発R』編集長

本間文庫にいがた食の図書館」運営

         株式会社ニール

高橋真理子