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コラム 2025.05.02

酒蔵見学のスタイルいろいろ

ゴールデンウィークもいよいよ後半戦。おでかけ先が決まっていない方は、日本一の酒蔵数を誇る新潟県の酒蔵見学へ。一口に「酒蔵見学」といっても、そのスタイルはさまざま。毎年10月1日の「日本酒の日」に発行している、新潟県内全酒蔵を紹介するガイドブック『cushu手帖 新潟の酒蔵&まちめぐり』の酒蔵見学情報をベースに、見学スタイル別にご紹介。GWだけでなく、新潟旅の目的の一つに酒蔵を加えよう。

酒造りの現場に入って見学

実際に酒造りをしている現場に入ることができる酒蔵は多数ある。

佐渡市の北雪酒造(「北雪」)・逸見酒造(「真稜」「至」)・天領盃酒造(「天領盃」「雅楽代」)、五泉市の近藤酒造(「菅名岳」)、阿賀町の麒麟山酒造(「麒麟山」)・下越酒造(「麒麟」「ほまれ麒麟」「蒲原」)、新潟市の今代司酒造(「今代司」)・塩川酒造(「願人」)・高野酒造(「越路吹雪」)・笹祝酒造(「笹祝」)・たからやま醸造(「たからやま」)、長岡市の朝日酒造(「朝日山」「久保田」)・お福酒造(「お福正宗」)・池浦酒造(「和楽互尊」)、小千谷市の高の井酒造(「たかの井」「田友」)、魚沼市の玉川酒造(「玉風味」)・緑川酒造(「緑川」)、十日町市の魚沼酒造(「天神囃子」)、上越市の上越酒造(「越後美人」「越の若竹」)・竹田酒造店(「かたふね」)・武蔵野酒造(「スキー正宗」)・代々菊醸造(「吟田川」)・田中酒造(「能鷹」)・妙高酒造(「妙高山」)、妙高市の千代の光酒造(「千代の光」)。この中で予約なしで通年利用できるのが雪中貯蔵庫「ゆきくら」がシンボルの玉川酒造。ゆきくら見学、酒米をとぐ「洗い場」や米を蒸かす「蒸し場」・貯蔵庫の見学、売店での試飲などが楽しめる。

玉川酒造の雪中貯蔵庫「ゆきくら」

酒造現場に入る場合は、香水や整髪料など匂いの強いものを避ける、歩きやすい靴で、酒造道具や機械に触らないなどのルールを守って気持ちよく見学しよう。朝食に納豆を食べてはいけないなど、食事に関する注意事項を設けている酒蔵もあるので、確認しよう。

ガラス越しに酒造現場を見ることができるのは佐渡市の尾畑酒造(「真野鶴」)、新潟市のラグーンブリュワリー(「翔空」)、道の駅にもなっているよしかわ杜氏の郷(「よしかわ杜氏」「天恵楽」)、糸魚川市の加賀の井酒造(「加賀の井」)など。このうち、尾畑酒造とラグーンブリュワリー、よしかわ杜氏の郷はカフェや直売所と隣接しているので、その時間内であれば予約なしで利用できる。

ラグーンブリュワリーのカフェ。ガラス越しにタンクが見える

酒蔵によって繁忙期は見学ができない場合や、酒蔵営業日のみ可能、不定休など営業形態もさまざま。試飲も無料・有料・見学料込みなどいくつかのタイプがある。締め切り日を設定している酒蔵も多い。一方で、新潟駅から徒歩圏内(約15分)の今代司酒造は、当日でも空きがあれば申し込み可能だ。

創業1767(明和4)年の今代司酒造

スタッフの解説を聞きながら見学できる

母屋の入り口や直売所で試飲や買い物を楽しむ

酒造りの見学はできないが、酒蔵内での販売と母屋の土間など酒造現場の入り口までは見学でき、酒蔵の歴史や酒造りについて説明を聞くことができるのが村上市の宮尾酒造(「〆張鶴」)と妙高市の君の井酒造(「君の井」)だ。ともに予約は不要。歴史ある酒蔵の梁のある、雪国ならではの知恵の詰まった建物を見学するのも興味深い。

宮尾酒造の造り蔵入口スペース

宮尾酒造と親交のあった故安西水丸のイラストも展示されている

酒蔵とは別棟に直売所があり、買い物や試飲、酒蔵の紹介を展示しているタイプもある。村上市の大洋酒造(「大洋盛」)の「和水(なごみ)蔵」、新潟市のDHC酒造(「嘉山」)の「嘉山亭」、柏崎市の原酒造(「越の誉」)の「酒彩館」・阿部酒造(「あべ」「越乃男山」)の「直売所兼コーラ棟」、糸魚川市の渡辺酒造店(「DOMZAINE WATANABE」)の「豊醸蔵」などがそれにあたる。

DHC酒造「嘉山亭」の売店コーナー

飲み比べが楽しめる試飲おつまみセットも用意

テーマパークのような施設も登場

新発田市の菊水酒造(「菊水」)では日本酒に関する資料や道具を見学できる資料室と、手造りの酒造りを行う節五郎蔵がある「菊水日本酒文化研究所」を併設。ガラス越しに節五郎蔵の内部を見ることもできる。

菊水日本酒文化研究所

長岡市の吉乃川(「吉乃川」)は大正時代に建設され国登録有形文化財に指定されている倉庫「常倉」を改装し、2019年に「吉乃川 酒ミュージアム 醸蔵」をオープン。吉乃川の定番やここだけで味わえる特別な限定酒もそろうSAKEバーをはじめ、酒造り道具の展示、クラフトビール醸造所があり、酒造りシミュレーションゲームや買い物を楽しめる。

吉乃川SAKEミュージアム 醸蔵

大正時代建築の蔵の梁などを生かしたレトロモダンな空間

南魚沼市の八海醸造(「八海山」)は大吟醸造りの技術をレギュラー酒に応用するために造られた酒蔵「第二浩和蔵」(見学不可)がある里山一帯を「魚沼の里」として開発。

八海醸造が手掛ける魚沼の里

見学可能な八海山雪室、菓子店や熟成肉専門店などの個性豊かなショップや飲食店、クラフトビール醸造所などが集う観光施設として人気を集めている。雪室の雪中貯蔵庫見学ツアーは当日販売を行っているが、公式サイトで事前予約しておくのがオススメ。

個性的な新潟清酒体感の場が続々登場

ここ数年で、新たな直売所や体験施設が次々にオープンしている。笹祝酒造の「麹の教室」や阿部酒造の「コーラ棟」など、大人だけでなく子ども連れで訪れても楽しめ、次世代に日本酒の魅力を伝える施設も登場。

子どもから大人まで麹を学べる体験施設

笹祝酒造の麹の教室では、予約制で塩麹や醤油麹などを作ることができる

尾畑酒造では廃校を活用した学校蔵に、発酵メニューが楽しめるカフェを新設。学校見学とテイスティングが楽しめるコースも実施している。

海を一望できる高台にある廃校を活用して誕生した学校蔵

学校見学とテイスティングを楽しめるコースもある

菊水酒造では2025429日に、ラボやショップ、カフェ、ガーデンなどが一体となった発酵発信基地として「KIKUSUI蔵ガーデン」をオープンした。

KIKUSUI蔵ガーデンのカフェ

KIKUSUI蔵ガーデンのラボではさまざまなイベントを開催

 

6月には湯沢町の白瀧酒造(「上善如水」)がショップと試飲カウンター、体験型ラウンジを備えた「shop&Taproomflow》」をオープン予定だ。上越新幹線の越後湯沢駅から徒歩数分の場所に登場する新施設にも期待したい。

6月にオープン予定の白瀧酒造「shop&Taproom《flow》」完成予想図

 

 

※予約不要でも、見学に出かける前に公式サイトやSNS、電話などで営業日や時間などを確認しよう。

※個人は予約不要でも、団体の場合は予約が必要な場合が多い。

写真協力:尾畑酒造酒造、宮尾酒造、菊水酒造、今代司酒造、笹祝酒造、ラグーンブリュワリー、DHC酒造、吉乃川、玉川酒造、八海醸造、白瀧酒造

 

 

 

ニール

(『cushu手帖』『新潟発R』発行)

高橋真理子