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コラム 2022.05.31

日本酒コンテストいろいろ

2022年525日、独立行政法人酒類総合研究所が主催する、「令和3酒造年度全国新酒鑑評会」の入賞酒が発表された。100年以上の歴史をもつ、清酒業界最大の品評会だ。他にも全国各地域の国税局主催の鑑評会や、民間団体主催の品評会などが国内で多数開催されている。

さらに日本酒への注目度の高まりとともに、海外でもさまざまなコンテストが実施されている。コンテストは、日本酒への興味をふくらませる一つのアイテムでもある。主なものを紹介しよう。

 

※令和3酒造年度:令和3年7月1日から令和4年6月30日まで。酒造年度は醸造年度、BY(Brewery Year)とも表現される。

新潟の酒蔵にとっての3大品評会

日本酒の品評会は、単なる競い合いではなく、技術研さんの貴重な場でもある。出品酒に取り組む期間は、蔵の中に特別な緊張感がみなぎり、蔵人の集中力もより高まるといわれている。

新潟の酒蔵が、長年特に意識してきた3つの品評会がある。

 

1つ目が、今年、全国新酒鑑評会の入賞酒発表の約1カ月前の426日に表彰式が開催された「越後流酒酒造技術選手権大会」だ。

新潟県酒造組合と新潟県酒造技術研究会が主催するこの大会の目的は、高級酒造りの技術向上。そのために自社の吟醸酒を持ち寄って酒質を競う。

注目したいのが、長野県や愛知県など、かつて越後杜氏集団が出稼ぎで醸造を担っていた酒蔵も参加できること。そして、1位(新潟県知事賞)から10位までが表彰されることだ。

この品評会の第1回が開催されたのは1968(昭和43)年。杜氏たちが所属する旧新潟県酒造従業員組合連合会(現新潟酒造技術研究会)が主催。この会に所属する杜氏に参加資格があるため、全国に出稼ぎに出ていた杜氏たちも参加していた流れから、現在も県外の酒蔵も参加している。かつては、越後杜氏にとっては、全国で活躍する越後杜氏のナンバー1を決める品評会という認識でもあったという。

 

2011年から組織改編に伴い現在の名称となったが、現在でも10位までを決定するシステムは変わらない。

令和3酒造年度の表彰式。経営者と杜氏(製造責任者)が表彰される

令和3酒造年度の第1位、新潟県知事賞には小千谷市の高の井酒造が輝いた。杜氏の木村明裕さんは新潟清酒学校卒業生だ。

高の井酒造の受賞酒「伊乎乃 大吟醸原酒」

結果はこちらから。

 

2つ目が、行政が主催する唯一の全国的な品評会「全国新酒鑑評会」。1911(明治44)年に第1回が開催されたという歴史を誇る。

対象となるのは吟醸酒の原酒で、予審と結審を経て、入賞、さらに入賞酒の中から金賞が決定する。

令和3酒造年度の出品数は826点。そのうち入賞が405点、金賞が205点だった。

新潟県の酒蔵は入賞26点、うち金賞が12点だった。

ちなみに今回最も金賞が多かったのは福島県の17だった(入賞は32)。

入賞酒目録

今年3年ぶりに61718日に東京国際フォーラムで開催される「日本酒フェア」内で、金賞酒約230点の利き酒ができる「全国新酒鑑評会公開利き酒会」が開催される。残念ながら参加申し込みは531日で締め切られたので、逃した方は来年以降に参加しよう。

2016年に開催された日本酒フェアのオープニングの様子

2016年の公開利き酒会の様子。地域ごとに入賞酒が並ぶ

 

3つ目が毎年秋に開催され、酒の熟成度が評価される「関東信越国税局酒類鑑評会」。関東信越国税局管内(茨城、栃木、群馬、埼玉、新潟、長野)で醸造される酒類の品質向上を目的に開催されており、2021年秋で92回を数えた。現在は「吟醸酒」「純米吟醸酒」「純米酒」の3部門で、最優秀賞と特別賞、優秀賞が決まる。

過去の表彰式の様子

92回では新潟県勢は多数が優秀賞に入賞。残念ながら最優秀賞は逃したが、純米吟醸酒の特別賞に上越市の頚城酒造「越路乃紅梅」、純米酒の特別賞に柏崎市の原酒造「越の誉」が選ばれた。

頚城酒造の「越路乃紅梅 純米大吟醸」

原酒造の「越の誉 淡麗純米 彩」

まだまだある、国内の大会

民間が主催する国内の品評会にもさまざまなものがある。

 

3月に2022年の結果が発表された「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」は、海外では一般的なワイングラスで楽しむスタイルで、日本酒の新たな魅力を引き出すことを目的に、5部門で最高金賞と金賞を決める。

2022年は、新潟県では最高金賞に7蔵が、金賞に21蔵が選ばれた。

 

日本酒ならではの品評会といえるのが「全国燗酒コンテスト」。2021年は8月に審査が行われた。

「お値打ちぬる燗部門(45)」「お値打ち熱燗部門(55℃)」「プレミアム燗酒部門(45℃)」「特殊ぬる燗部門(45℃)」があり、それぞれの部門で最高金賞と金賞を選定する。

21年は、新潟県では最高金賞に4蔵、金賞に17蔵が選ばれた。

 

元サッカー日本代表の中田英寿さんが実行委員を務め、市販酒を評価する品評会が「SAKE COMPETITION(サケ コンぺティション)」。

残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響で、2019年から22年まで中止となっている。来年こそは再開されることを期待する。

海外で開催されている日本酒品評会

1984年から、毎年4月にイギリスのロンドンで開催されているのが「インターナショナルワインチャレンジ(IWC

2007年から新設されたSAKE部門には9ジャンルがあり、それぞれで金・銀・銅メダル、大会推奨が選ばれる。さらに金メダルの中から各部門の「トロフィー」が選ばれ、トロフィー受賞酒の中から「チャンピオンサケ」が決まる。過去に新潟県の酒蔵では2010年に渡辺酒造店(糸魚川市)の「Nechi2008」がチャンピオンサケに輝いた。

2022年424日から27日にロンドンで開催された審査会の結果、新潟県の酒蔵も多数が入賞。その中で2部門で金メダルを受賞した。

「純米酒の部」の「八恵久比岐 土DAICHI」(頚城酒造/上越市)と、「純米大吟醸酒の部」の「みなも山田錦中汲み大吟醸原酒」「みなも中汲み大吟醸原酒 広島吟醸酵母」(ともに吉乃川/長岡市)だ。

頚城酒造の「八恵久比岐 土DAICHI」

吉乃川の「みなも山田錦中汲み大吟醸原酒」

吉乃川の「みなも中汲み大吟醸原酒 広島吟醸酵母」

「八恵久比岐 DAICHI」と「みなも中汲み大吟醸原酒 広島吟醸酵母」はそれぞれの部門のトロフィーにも輝いている。

今年のチャンピオンサケは7月7日に発表予定だ。

 

同じロンドンでは、ヨーロッパでの日本酒専門品評会の先駆けといえる「ロンドン酒チャレンジ」が、酒ソムリエ協会(SSA)によって開催されている。ラベルやパッケージの審査もある点が特徴的だ。

 

アメリカで2001年から開催されているのが「全米日本酒鑑評会」。

入賞酒をテイスティングできる一般向けの公開利き酒「THE JOY OF SAKE

のイベントも行われている。2022年は6月にホノルルで、8月にニューヨークで開催予定だ。

 

フランスのパリで開催されている「Kura Master(クラマスター)」は20225月に6回目が開催され、66日に受賞酒が発表される。

 

海外での日本食と日本酒需要の高まりとともに、ヨーロッパやアジア各国で新たな品評会も誕生している。新潟清酒の海外事情を知る上でも、海外のコンテストにも注目してみたい。

 

 

cushu手帖』『新潟発R』編集長

本間文庫にいがた食の図書館」運営

         株式会社ニール

高橋真理子