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コラム 2021.08.11

新潟清酒流 夏酒の楽しみ方

8月初旬の猛暑で、ぐったりと疲れ切っている方も多いのでは。

そんな疲れを吹き飛ばす、夏の日本酒の楽しみ方を、食文化研究家で日本酒スタイリスト、世界へ向けて日本酒などの日本文化を発信する彩食絢美代表の手島麻記子さんにお聞きしました。

 

2018年には越後湯沢駅で「新潟地酒の飲み比べワークショップ」の講師も務められ、新潟清酒についても造詣の深い手島さん。

新潟清酒の特徴を生かした楽しみ方もお聞きしました。

 

原酒ロックと、日本酒×ビールのカクテル

ひと口めが甘くても辛くても、最後はすっきりと切れて、きれいな余韻が残るのが、新潟清酒の大きな特徴。

「切れ味のいい新潟のお酒は、ロックと相性が抜群です。割り水をしていない原酒に氷を入れて、そこにミントなどのハーブを浮かべると、とても爽やかです。ハーブの香りを楽しみたいので、お酒自体は香りが立っていないものがおすすめです。高級酒でなくても、純米酒や山廃(やまはい)などのしっかりとした旨みがあるお酒であればOKです」

ロックやソーダ割りに向いている日本酒のコーナーも(ぽんしゅ館新潟驛店)。

暑いときの日本酒の楽しみ方として、日本酒造組合中央会では以前から日本酒カクテルを推奨し、その発信も担ってきた手島さん。

「カクテルはレシピがしっかりと決まっているものが多いのですが、簡単にできて想像を超えるおいしさになる組み合わせが、ビールとにごり酒。1対1で割るだけ。にごり酒をスパークリングウォーターで割るイメージですね」

ビールとにごり酒……。いったいどんな味わいになるのか、気になります。

「ビールの苦みとにごり酒の旨みと甘みが溶け合って、絶妙な味わいになります。すごくおいしいですよ。もちろんどちらもよく冷やして、にごり酒を先に、そのあとにビールを勢いよく注いでくださいね。どぶろくでも、コクが増しておいしいですよ」

勢いよく注ぐのがポイント!

 

大人の自由研究=日本酒を遊ぶ

通常では試さない飲み方にチャレンジできるのが、夏酒の醍醐味。

夏休みの自由研究に取り組むつもりで、いろいろ試してみましょう。

 

新潟清酒の魅力の一つに、カップ酒のクオリティの高さがあります。

種類も多く、見ているだけでわくわくするカップ酒。夏ならではの楽しみ方は―。

「カップ酒のフタを取ってふんわりとラップをかけ、少し穴をあけて空気が入るようにして、冷凍庫に2~3時間入れておきます。一度かき混ぜて、再び冷凍庫で2~3時間凍らせると、わずかに苦味を感じる、おとなの日本酒シャーベットができあがります」

ラップをかけたら竹串などで穴をあけて。

 

ぽん酒シャーベット! 想像しただけで涼しくなりそうです。

「注意点はアルコール度数15度以下ということです。アルコール度数が高すぎると固まりません。通常の家庭の冷凍庫の温度マイナス18度の場合です。

そのままで日本酒の隠れた苦みを楽しむのもいいですが、かき氷のシロップをかけてもいいですね。地元のフルーツを使ったジュレをのせてもおいしいそうです」

梅酒のカップ酒シャーベットもおすすめ。何もかけずにそのまま食べて。

 

フルーツを使った夏の日本酒としてもう一つ。

「カットしたパイナップルや丸くくり抜いたメロンを凍らせて、それをグラスに入れて、そこに日本酒を注ぎます。フルーツがとけていくとお酒に少しずつ風味が加わっていきます。その味の変化が面白い。フルーツ パンチ感覚で楽しめます」

©彩食絢美

 

新潟の夏を代表するフルーツ、スイカでも試してみました。ほどよい甘みがマル!

 

最後にこれぞ涼を呼ぶ日本酒! 「みぞれ酒」について教えていただきました。

「みぞれ酒はシャーベットの前段階。暑いときにまずは一杯クイッと飲むと最高です。おすすめは日本酒度がマイナスの甘めのもの」

作り方が気になります。

「ガラスの片口などの酒器にお酒を入れて、もうひとつは空のグラスを用意して、ともに約90分凍らせます。お酒は凍りませんが、キンキンに冷えた空のグラスにお酒を注ぐと、グラス面に当たりながら凍っていきみぞれ状になります。ショットグラスや背の低いタンブラーで、はじめの一杯にキュッと飲むと、暑さを忘れさせてくれますよ」

 

大勢で飲むときや何杯も飲みたいときは、ペットボトルにお酒を入れて、グラスをたくさん冷やしておけばよいそうです。

「ペットボトルに入れるときは膨張することを考えて、満杯に入れないでくださいね」

 

完璧なみぞれ状に変化していくのは、温度やお酒の種類などの複数の条件がぴったりそろったとき。家庭では理想のみぞれ状にならない場合もあるので、カップ酒などの手ごろなお酒で、条件を変えて試してみて。

今年の夏は日本酒で遊び、楽しみ、暑さを乗り切りましょう。

 

©彩食絢美

 

手島麻記子

慶応義塾大学卒業、彩食絢美代表取締役社長、 食文化研究家。日本酒造組合中央会認証の日本酒スタイリストのほか名誉唎酒師酒匠や日本ソムリエ協会認定・ワインアドバイザー、復興庁認定集中支援専門家、日本醸造協会理事、2015年ミラノ国際博覧会日本館サポーターなどを務める。「日本酒のある豊かな暮らし」をテーマに、全国の日本酒とイタリアンなどの西欧料理との酒ペアリングや、「ライフス タイルとしての日本酒」の新しい楽しみ方、伝統的な日本の食文化の未来のスタイル提案などを国内外で広く発信している。

〇彩食絢美

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写真協力:彩食絢美 撮影協力:ぽんしゅ館新潟驛店                       

  『cushu手帖』『新潟発R』編集長

 高橋真理子

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