創業110年の蔵を引き継ぎ若い蔵人も育てる 百貨店でも好評な新潟・DHC酒造の挑戦
DHC酒造

DHC酒造DHC shuzo

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PICK UP 2021

関東信越国税局酒類鑑評会 3年連続優秀賞。蔵の母屋を改装した資料展示・試飲スペース「越後の里 嘉山亭」も2020年1月にオープンして早1年。地元豊栄の活性にも繋げ、地域からより愛される酒蔵を目指します。

新潟市内北部の穀倉地帯にあるDHC酒造

DHC酒造は、新潟市北区(旧豊栄市)の地で100年以上に渡り日本酒を造り続けてきた酒蔵です。現在は化粧品・健康食品のDHCのグループ会社として、若い世代にも親しまれやすく美味しいお酒造りに熱く取り組んでいます。

しっかりした味わいのブランド『越乃梅里』

生産の舞台を担うのは新潟市北区にあるDHC酒造である。前身の小黒酒造は1908年に創業。1990年代には関東信越国税局の鑑評会で毎年のように金賞を受賞していた。
全国新酒鑑評会でも金賞受賞の常連で、「有機JAS認定工場の取得」にも取り組んだ。安全で安心して美味しく飲める酒造りを念願してのこと。DHC酒造ではこの理念のもと、いまも『越乃梅里』シリーズを主力に展開する。『越乃梅里』は、1995年には関信局鑑評会で首席第1位も獲得した実績があり、「1983年に発売したしっかりした味わいのブランド」と強い信頼を置いている。
蔵がある新潟市北区はかつて豊栄市(とよさかし)と呼ばれたエリア。穀倉地帯の中心部に位置し、その名からも想像できるように豊かな稲作の実りに恵まれてきた。
周囲に良質の酒米産地が控えていることは、酒蔵にとって有利な立地条件。
「恵まれた環境でDHC酒造が目指すのは、人の手をかける酒造りです。スッキリとしてかつ深みを感じさせる味のバランス、そして爽やかな切れ味の酒質を追求しています」
ますます、期待を抱かせてくれる。

満を持して発売した『悠天 純米吟醸』

ずらりと並ぶサーマルタンク

2017年5月には新ブランド『悠天』が発売された。「最高に美味しい辛口」を目指して開発されたという。
「コンセプトは、辛口でスッキリした味わいながらも吟醸香と米の旨みを感じられる純米吟醸です。新潟は淡麗辛口のお酒で知られますが、本格辛口がほしいという声が上がっていました。
辛口にはアル添酒が多いのですが、あえて純米吟醸での辛口を追求したのです」
「最高の美味しさ」を求めて、原料へのこだわりのみならず製法にも吟味を重ねたという。
「上槽し滓下げした後はすぐに瓶詰めして、火入れは瓶火入れ1回のみ。特製の氷温庫で熟成させ、常に最上の品質で出荷できるようにしています。柔らかい飲み口、旨み、香り、そして飲んだ後に広がる余韻まで楽しめる、飽きのこない日本酒です」
とのこと。 辛口ならではのシャープな味わいを引き立てるには、涼冷え(15℃)くらいの温度がお勧めとか。

首都圏の百貨店などでも好評

手作業による瓶燗火入れ。特定名称酒は全て氷温瓶貯蔵。

キリッとした淡麗辛口ながら、穏やかな香りと旨みをバランスよく表現。すっときれいに引いていく後味が、料理を引き立てる。この『悠天 純米吟醸』、市場での評価はどうだったのか。
「首都圏の百貨店や高級スーパーにも置いてもらったところ、反響は良好でした。ボトルのデザインも目を引いたようです」
確かに、流麗な筆文字のラベルをまとったエレガントなデザイン。質感、存在感のある雰囲気に思わず手が伸びる。DHC酒造の新しい開発商品は、蔵の未来を象徴するかのように思える。

地酒が愛される文化に応える

越淡麗の栽培は地元の契約農家に依頼

製造割合は特定名称酒が90%で普通酒が10%。出荷先は地元・県内が70%。特定名称酒が圧倒的多数なのに、出荷比率は地元県内が多い。
「普通酒は『朝日晴』があるだけ。大正期に発売した地元向けの晩酌酒、お陰さまで長年のファンに支えられています。なにしろここには、地酒を愛する文化が根付いていますから、普通酒に限らず地元に美味しく飲んでいただけることが大事。原料をいただいている地元にこそ、いい品質のものを提供したいと考えています」
使う酒米は「五百万石」と「越淡麗」が主体。「越淡麗」は地元の農家で栽培してもらっているという。さらに、造りで大事にしているのは地元の米に合った酒造りとか。
「一般に五百万石だけだとお酒はスッキリしすぎる傾向があります。そこで膨らみのある味わいを出すために、開発された品種が越淡麗です。当社では五百万石と越淡麗をうまく使い分けて、辛口から甘口までを造っています。」
地元で原料を調達できるからこその強み。使用米に確かな信頼感がある。

人力は人の手が必要な部分に傾注

機械化も導入しながら手作りを大切に

芳醇かつ澄み切った味わいで最高に美味しい辛口を目指した純米吟醸、これを可能にしたのは製造設備にもあるようだ。
洗米など機械の方が正確な工程には先進の機械を導入。人力は人の手が必要な部分に傾注しているという。
「機械化といっても半自動的な形です。条件を決めたり、最終判断は人がするのですから。工程で最重要視しているのは麹造り。酒の香味に大きく影響するからです」
また設備で特筆すべきは貯蔵庫。瓶詰めされた商品は-4℃で氷温貯蔵されている。最上の品質のまま出荷できるのもこうした背景があるからだろう。

若い世代が多い造り手

2020年1月にオープンした「越後の里 嘉山亭」

製造部は8人体制で若い世代が中心。新潟清酒学校へ通っている若手社員もいるという。「小さい会社ですが、誰もが自分を反映できる場がある。今後も新しいことに挑戦をしていきたい。」と将来への展望は明るい。 以下は蔵元お勧めの商品。

取材/伝農浩子・文/八田信江