衛生環境(HACCP)の関係により、蔵の中に入ることが出来なくなりました。そこで、VRゴーグルを利用し上下左右360度見渡せるバーチャル体験に変更。椅子に座っていながら、酒造りの工程ごとにリアルな蔵見学ができます。
白鳥の飛来地としてラムサール条約にも指定されている「瓢湖」から、ほど近い、国道49号線沿いに「越後桜酒造」はある。1890年に水原町(現在の阿賀野市)で創業、当時から盛んに稲作が行われていたことから、地元の米を使用し自然豊かな風土で仕込んだのが始まり。
一般的には高級酒とされる大吟醸にもかかわらずリーズナブルな価格で購入できる点が、飲み手の心を掴み続ける理由のひとつとなっているようだ。
2009年に歴史ある酒蔵を全面改装し最新式の設備を導入。ほぼ年間を通しては大吟醸を効率よく醸造することができる。またフレッシュローテーションが可能となり、品質の良さと手に取りやすい価格との両立が実現したことも大きな要因といえる。日々の食とともに楽しめる「テーブル大吟醸」こそ、蔵元が求めてきた理想の酒だ。伝統の製造技術を守りながら、新しい酒造りもチャレンジし続ける。
地元の観光スポットにもなっている「白鳥蔵」は、白鳥が瓢湖を飛び立つ姿から名付けられた。
社長の羽澤さんは、感染禍でも一人の多くの方に酒蔵を観ていただきたいと、VRゴーグルを利用し臨場感ある酒蔵見学を実施。日頃、蔵人しか入ることのできない場所もリアルに見ることができるようになったと語る。
酒蔵では、20~60代まで幅広い年齢層の蔵人たちが日々『越後桜』を醸している。杜氏の大竹豪さんは、年齢や経験の別なく、チームワークは良好。蔵の構造上、各工程の進み具合がひと目で分かるので人手が必要な時の対応も早い。大事なのは人の目と手と判断なんです。と話す。そんな工程がVRにて御覧になれます。
「瓢湖は『白鳥の飛来地』としてあまりに有名ですが、10~3月のシーズンでなくてもあやめや桜、あじさいなど、四季折々の景観が楽しめるんですよ」と、羽澤社長。
近隣には温泉地も多く、「白鳥蔵」も阿賀野市の観光スポットのひとつとして貢献できたらと意気込む。「白鳥蔵」の楽しみは、VR酒蔵見学だけにとどまらない。
蔵限定で楽しめる生しぼり酒の試飲や販売、地元企業の醤油や染工場の前掛けなどの物産品もあり、さながら阿賀野のちいさなアンテナショップのよう。観光客の立ち寄りスポットとしても人気が高い。
地域や飲み手にとってより身近な蔵になることこそ、越後桜酒造にとって最大の願いなのだ。
羽澤社長:新潟の大自然に育まれた米と水、伝統の技術で蔵人が丹精込めて醸し出した「越後桜」の味わいを、是非ご家庭でお楽しみください。
では、蔵元が自信を持って勧める日本酒を、いくつか紹介しよう。
華やかな香りが立ち、旨みがありながらすっきりとした後口。大吟醸でありながら低価格を実現。毎日のディナーに「テーブル大吟醸」として楽しめる。
持ち味の繊細な酒質は、ワイングラスに注いで味わいたい。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」金賞の常連酒としても評判。
米を贅沢に38%まで精米し、素材と手間にこだわった一品。
日本酒をさらに世界へ広めたいと海外の品評会へも参加。ゴールドメダルや三ッ星など高評価を得ている。世界でも認められている品質。
蔵の名を冠した、新潟県内限定酒。原料米は新潟県産にこだわり、米の旨みをしっかりと感じられる味わいに仕上げている。
紫外線の影響による劣化を防ぎ、持ち運びにも便利な紙パックを選択したのは、さまざまなシチュエーションで気軽に飲んでほしいから。冷やでも燗でも、好みの温度帯で楽しめるのも嬉しい。
取材・文 / 市田真紀