「皆さまに愛される美酒」を求めて、物言わぬ酒と真摯に向き合い、熱意あふれる蔵人たちと奮闘中です。
蔵のある阿賀野市は、上質な「コシヒカリ」を栽培する新潟県有数の穀倉地帯。
二十余年前からは、旧・水原町(すいばらまち)地区の農家とともに設立した「酒米協議会」のメンバーによる「五百万石」の栽培も始めたのが、白龍酒造だ。
さらに現在は、大吟醸などの上級酒に多く使われる「越淡麗」も手掛けるなど、規模を拡大。20数軒の生産者とともに、より高い品質を求めて活動を続けている。
「生産者の顔が見えるお米だと、安心して酒造りができますね」。製造責任者として酒造りを取り仕切る専務取締役の白井伸児さんは、長年のパートナーである契約農家について笑顔でこう話す。
契約栽培米で醸した酒のボトルに掛けられたPOPには、生産者の集合写真とともに「新潟県阿賀野市の地元農家と契約栽培」との文言が刻まれている。
蔵と同じ気候、水環境で育まれた米で醸す「白龍」の酒には、米どころ阿賀野市の魅力と誇りがぎゅっと詰まっているようだ。
阿賀野川水系の豊かな水と、その恩恵を受けて育った米で醸す「白龍」は、淡麗な中に膨らみのある旨みをたたえた美酒。
その味わいは、歴代の越後杜氏に学んだ技によって磨かれてきた。 特に麹造りは、原料処理段階から決して気が抜けないと白井専務は語る。
「品種や米質によって微妙な加減をするのが難しい。『白龍』の味がブレないよう、ここできちんと造り込むことが一番大事だと考えているのです」
毎年全力の酒造りをしてもなお「満足したことはない」と、白井専務。その言葉には、謙虚さと一層の技術向上を志す芯の強さが同居しているように感じられた。
白龍酒造の酒は、韓国をはじめ欧米や東南アジア各国で流通。国内外で広く愛飲されるブランドへと成長した。その飛躍のきっかけとなったのが、1990年代前半から出品を続ける「モンドセレクション」での輝かしい成績の数々だ。
「モンドセレクション」とは、ベルギーのブリュッセルに本部を置く食品や飲料などの品質評価機関。「白龍」の酒はここで1994年以来、現在まで連続して金賞を受賞し続けている。
しかも最高金賞に21回、国際優秀品質賞に24回も輝き、2017年にはついに25年連続受賞した企業にのみ贈られる「プレステージ・トロフィー」も獲得。
品質にこだわり酒造りを続けてきた蔵元にとって、これほど誇らしいことはないだろう。 はじめは「日本酒が世界でどのような評価を受けるのか」を問うために出品していた白龍酒造だが、あくまでも大切なのは国内、とりわけ地元新潟の飲み手だと白井専務は言い切る。
「一人でも多くの人に飲んでいただけること」。それが、蔵元にとって一番の喜びだ。
白井専務:20代~60代の蔵人約10人と力を合わせて臨んでいます。 メンバーの中には「五百万石」の生産者もおり、毎年の米の出来を見ながら丁寧な酒造りを心掛けています。
酒造りにゴールはありませんが、醸すたびに生まれる新たな課題や反省点を次に活かし、少しでも皆さんに「おいしい」と笑ってもらえる味を追求し続けます。
それでは、蔵元が自信を持って勧める日本酒を、いくつか紹介しよう。
フルーティーな香りとともに口中に広がるまろやかなコクは、まさに新潟淡麗の味わい。かの「モンドセレクション」で28回に及ぶ金賞受賞歴を誇り、1997、2022年には最高金賞にも輝いた。
新潟県が誇る酒造好適米「越淡麗」を精米歩合40%まで磨き込み、通常の2倍もの時間をかけてじっくりと低温発酵させた珠玉の銘酒は、県内はもちろん首都圏の多くのファンをも魅了し続けている。
「大吟醸 白龍」同様に、淡麗辛口で後口はすっきり。キリリと冷やして飲むのはもちろん、料理に合わせて燗で楽しむのも粋でいい。
こだわりの原料米は、阿賀野市旧水原町地区の生産者が手塩にかけて育てた「五百万石」とあって、蔵元の思い入れがひときわ強い商品のひとつでもある。
新潟の地に脈々と受け継がれてきた越後杜氏の技で醸した一本。毎日飲んでも飽きることのない、深い味わいがたまらない。
最近は料理と酒のペアリングを提案する向きもあるが、ジャンルを問わずあらゆる料理とともに楽しみたい。それが純米酒の魅力であり、料理によって見せる新たな味との出合いにもつながるはずだから。
取材・文 / 市田真紀