「越後三梅」とうたわれて地酒ブームを盛り上げた『峰乃白梅』 400年近い歴史の老舗蔵
峰乃白梅酒造

峰乃白梅酒造MINENOHAKUBAI shuzo

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PICK UP 2021

広がるフルーティーな香り、従来の淡麗辛口に比べ、『香り高い辛口酒』として、余韻もしっかりとDRYに味わえる芳醇辛口なお酒。【菱湖】シリーズより2番目の定番として『菱湖 純米ドライ』を限定流通にてリリースしました。

松や杉の木立に囲まれて自然豊かな環境に蔵はある

国鉄が展開した「ディスカバージャパン」のキャンペーンに乗り、「越後三梅」のひとつとして、1980年代の地酒ブームを牽引したのが、『峰乃白梅』だ。

霊場弥彦山にもほど近い

その醸造元は越後平野のほぼ中央、新潟市の日本海寄りに蔵がある。
岩室温泉を挟んで山岳信仰の霊場弥彦山と、四季を通してトレッキングが楽しめる角田山(かくだやま)が並ぶが、長者原山とも呼ばれるこの角田山の山麓に広がる福井地区が、『峰乃白梅』のふるさとだ。
このあたりは、旧石器時代や縄文時代の遺跡、古墳時代前期の古墳などがあることから、1万年以上も昔から開けていた土地であるらしい。

城下町として栄えた歴史

蔵の裏手には小川を、奥には国定公園の多宝山を望む

江戸時代には、長岡藩の支藩・三根山藩一万石の城下町として栄え、また北国街道筋にあって岩室温泉や弥彦神社に近いことからにぎわったという。
「冬の日本海からの北風が山を越えて吹き下ろすため、酒造りの季節は極寒となり、酒を醸すのに絶好の環境となります」 と代表取締役の高橋芳郎さんは、蔵の立地について語る。
また、これらの山に降った雨は黒御影の層で長い年月をかけて磨かれ、弥彦・角田山系の伏流水となって蔵の周りに湧き出している。
蔵の裏手を流れる小川には、夏になると無数の蛍が飛び交うというから、きれいな水の証だろう。

『芳醇』を醸す

ラベルを新しくした『峰乃白梅』純米吟醸・純米酒・本醸造

こうした恵まれた自然条件と、この土地ならではの良質な水は、すっきりとしたきれいな味わいの酒を生み出す。
「新潟淡麗辛口にとらわれることなく、3年前より芳醇旨口の純米酒に挑戦し、飲み飽きしない芳醇な造りに力を入れてきました」と高橋社長は話す。
芳醇なお酒にこだわるのは、コメをしっかりと磨いて水を生かし本格的な品格を追求するゆえだろう。「今期からは、かねてより目標にしていた芳醇辛口にも挑戦にしています」と高橋社長。
美味しい本格派を求める情熱に終わりはないようだ。 蔵の歴史は寛永年間(1624~1643年)に遡る。徳川幕府は3代将軍家光の治世。
この頃、越後三根山藩に酒を献上したとの記録が残ることから、じつに380年にもわたって酒造りをしてきたことがわかる。
新潟県内で2番目に歴史ある蔵ということになる。 なお三根山藩は江戸末期の戊辰戦争で、荒廃した本家長岡藩にコメ100俵の救済米を贈った、いわゆる「米百俵」の逸話でも知られている。

『峰乃白梅』の名に込めた想い

代表銘柄を『峰乃白梅』としたのは、1979年のこと。
隣町の漢学者・斎藤而立庵師より贈られた漢詩から採ったもので、品質では山頂を目指して「峰」を、味わいには清らかさを求めて「白梅」を冠したという。
かくして「越後三梅」とうたわれ、新潟地酒の地位を確立。 全国新酒鑑評会では平成25・26・27酒造年度3年連続金賞、関東信越国税局酒類鑑評会では平成25・26酒造年度の吟醸の部・純米の部にて2年連続優秀賞W受賞を果たしている。
また、新潟県で伝統のある越後流酒造技術選手権大会では、令和元酒造年度に入賞している。
「3年前にラベルを一新しました。水にぬれてもはがれないようにしたのです」と高橋社長。

『菱湖』と共に新しい世界へ

芳醇旨口を追求した『峰乃白梅』のラインナップ

かつては、淡麗辛口の酒を追求し主なラインナップとして展開してきた峰乃白梅酒造だが、新たな世界の開拓を試みている。
『菱湖』(りょうこ)のリリースはそのひとつだ。 このシリーズは、芳醇旨口を楽しめる新潟県内では珍しいもの。その名は、江戸後期に蔵の近くで生まれた後 “幕末の三筆“と称えられ大活躍した書家の巻菱湖〔まきりょうこ〕に由来している。
すっきりとしたフルーツ系の香りと、ふんわりとした甘みを強みに、乾杯酒から食中酒まで対応できる酒質。酸とのバランス感も良くフレッシュな余韻が心地よく、飲み飽きしない。
例えば季節限定酒の『純米大吟醸 おりがらみ生』は、爽やかな梨やメロン系の果実の香りとなめらかな麹由来の甘みが印象的な味。45%に精米された山形県産山酒4号を100%使い、無濾過生原酒で詰められるため微発泡感もあり、適度な酸味は食事にも合わせやすい。
また、同じく季節限定酒の『純米大吟醸 備前雄町 ひやおろし』は、その名の通り岡山県産備前雄町を100%使用し、酒米【雄町】の特徴を活かしたジューシーで濃厚な味わいを醸している。酵母を工夫し、搾りたてをビン貯蔵することで、飲み頃になるまで時間が経っても香りが劣化していない。オマチストも唸る、香りと奥行きを感じられる酒。
『菱湖』は、現在の日本酒トレンドを取り入れた芳醇な感覚の新ブランド。芳醇“旨口”だけでなく、香りを活かした芳醇“辛口“にも現在挑戦している。今後のさらなる展開に期待が寄せられている。
それでは蔵元おすすめのお酒を紹介しよう。

取材/伝農浩子・文/八田信江