雪国ならではの雪と地域との共存共栄で300年の歴史 南魚沼『青木酒造』の伝統と挑戦
青木酒造

青木酒造AOKI shuzo

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PICK UP 2018

三方よしという言葉が昔からあります。私たちは造り手、売り手、飲み手の三つの和が重なりあった時こそ良酒が生まれると考えております。今期は「ていねいを磨く」。より一層の丁寧さをもって酒作りに精進し、お客様と接するように心がけます。

東京生まれ東京育ちですが、魚沼に戻って新潟人としての心構えが生まれました

新潟県の南端、米どころ新潟の聖地といわれる魚沼地方。世界的にも雪深いこの地で、1717年から青木酒造の歴史は始まった。

雪はやっかい者?

雪室は鉄骨造り2階建て。延べ床面積は約990平方メートル。貯雪量は約400トン。日本酒の最大貯蔵量は18万リットル。

「鶴齢という名は『北越雪譜』で知られる魚沼出身の随筆家、鈴木牧之が命名しました。実は鈴木牧之は私共の親戚筋にあたり、彼の作品からのインスピレーションも多いのです」という12代目当主、青木貴史さん。
昨年300周年を迎えた青木酒造は新潟淡麗の中でも淡麗旨口派の酒だ。
「新潟は雪国という印象が皆様、強いと思います。なかでもこの魚沼地域は日本有数の豪雪地帯。否応なしに雪と共存しなくてはいけない。毎日、雪かきをしないと家や駐車場から出られない。
そしてほんの数分で元の木阿弥。雪は本当に大変です。でもその大変さがあるからこそ、越後人はお互いを助け合う心が強いのです」
雪が多い地方だから、昔から雪を利用した生活の知恵は多かった。『北越雪譜』でも雪国の暮らしのつらさを正直に述べている一方、雪と戦う人々の暮らしの工夫や越後縮に代表される雪の利用などについて綴られている。
「雪の中に貯蔵する雪穴というのも昔からありましたね。県内でも数社、雪室を作られているところもあります。そんな前例もありましたので、我が社でも雪を活用する利雪、活雪を考えるようになりました」

雪がもたらす天然のクリーンルーム

「北越説話」からの一節

「雪国で暮らす者にとって、雪は時には災害を引き起こす厄介者。苦労が絶えませんが、再生エネルギーとして活躍してくれる有難い資源でもある。原料に使う酒米は周りの山の清らかな雪解け水で育ちます。その水が田園を潤すことで稲は元気に大きくなる。
新潟が米どころといわれる由縁も雪のおかげ。酒造りに欠かせない仕込み水も同じで、山からの雪解け水が地下水となり、安定した水量でいてくれるから。雪無くして我が社の酒は生まれません」
鶴齢の雪室は、電気を使った冷蔵と違い庫内の温度変化はないに等しいくらいだ。
5℃の貯蔵庫には生酒、5℃の熟成庫には純米吟醸酒、そして外気温度差−5℃~-10℃の保存庫にはレギュラー酒などを保管するという。貯蔵はすべて瓶貯蔵。
「雪室は様々な形や方法がありますが、我が社は雪だるま財団さんの監修のもと、雪で生まれた冷風をうまく循環させる風の通り道を作りました。自然の風の流れをいかに出すかが重要なのです。
その風は私たちが浴びても心地いいものですから、きっと酒もストレスを感じることなく味わい風味が良くなるかなと。
雪はただ降るだけで空気中のチリや埃を落としてくれる。いわば天然のクリーンルーム。十分に活用のしがいがある新エネルギーだなと感じています」

地元と未来のために今できることを

雁木の街並み

「日本酒は寒造りが一番」といわれる冬の期間だけ仕込みを行い、雪のもたらす様々な恵みと越後杜氏の伝統の技、そして手造りに徹する青木酒造。地元への惜しみない協力体制も半端ない。
「やはり地元あっての酒蔵だと私は思います。300年も続かせてもらったということは地元があってこそ。地域に必要とされないと300年も続かない。地元に必要とされるためにはどうしたらいいか、常日頃から考えていないと。僭越ながらそう思います。
雪利用もその一つですし、地元出身のスポーツ選手への援助も微力ながらやらせていただいています。選手が活躍したら、地元も大いに沸きますし、次世代のスター選手が生まれるかもしれない。地域の未来への投資も私たちの役割かと」
地元で約75%が消費されている青木酒造の酒。「雪男」の売り上げの一部は、山岳救助隊への寄付も行っている。

社訓の「和合」を合言葉に

遠くに見える山々からの恵み

酒販店、飲み手、酒蔵がきちんと信頼関係を築けるべく、直取引による流通の確立を目指す青木酒造。
少しでも高品質の酒を造りたいとワンランク上の造りを追求するために醸造設備はきちんと備え、青木酒造らしい造りにこだわりながらも品質の安定と供給を保っている。
何より最大の特長は同じ銘柄でも「精米歩合別」「酒米別」で飲み比べられるような実験的な造りをしていること。
「酒造りって単純です。造って売ればいいだけ。でもそれは努力しなくてはいけない。売るにも造るにも努力が必要です。当たり前のことを当たり前にやらなくてはいけない。結構それって大変。
当たり前のことだけになかなか周りは気づいてもらえないことも。酒販店や飲食店に何度も通い続けることで『青木酒造、頑張っているね。応援したいな。買ってみよう』という気持ちになってくれる。そこで信頼が生まれる。
その信頼関係を未来へ繋ぐためにも、『青木酒造がまた何かやっている』というワクワク感を常に提供していきたいですね」
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取材・文 / 金関亜紀