「酒造りにこれで満足はない」 世界的レストラン『NOBU』でも愛される佐渡の酒『北雪』
北雪酒造

北雪酒造HOKUSETSU shuzo

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PICK UP 2022

北雪酒造は明治5年創業以来、佐渡の米・水・風土・人にこだわった酒造りを大切にしています。
佐渡を知り、佐渡を愛する私達にしか出来ない酒造りに情熱を注ぎ、時代に呼応する感性で新たな挑戦をし続けてまいります。

北雪酒造株式会社・代表取締役社長の羽豆大さん。「目の前が海の蔵です。海の幸に合うタイプを造らせたらどこにも負けません!」

明治5年、佐渡島の赤泊地区に誕生した酒蔵、北雪酒造。冬になると北風によって日本海は大波が荒れ狂い、雪が積もる。過酷とも言える環境の中、創業当時から変わらないのが「佐渡の酒」であるという誇りだ。

儲けは二の次、良い酒を造る

「会長が常に口にしていることは、『いくら儲かるかは関係ない。いい仕事をすれば結果は自ずと後からついてくる』ということです」と、代表取締役社長の羽豆大さんは言う。
その言葉どおり、蔵が造りだす酒は一見、奇想天外なものも多いが全て理にかなっているのだ。中でも特徴的なことは、全国でもいち早く使い始めた遠心分離機による搾りだろう。これが蔵には大小2種類、計3台ある。

遠心分離機でストレスのかからない上槽

大小2種類、計3台を揃える遠心分離機

正式名称は「吟醸醪上槽システム」。特徴は醪を圧力でなく遠心力で搾るため、酒への過度な負担をかけず、まるで、雫酒のようなきれいな酒に仕上がる。

そのうえ、すべてステンレス製なので酒袋からつく独特のニオイが全くつかず、密閉空間で搾るため、吟醸香が空気中に拡散せず、酒にしっかりと残る。蔵では吟醸だけでなく普通酒もこれで搾っているそうだ。

「醪を満点の良い状態で仕上げても、そのあとの工程を重ねるごとに質は下がります。いかにして醪の時のような状態を少しでも保てるか。
ヤブタや槽など圧力で搾る工程は醪にかなりのストレスがかかり、それだけで酒の性格はガラリと変わる。遠心分離機では圧が全くかからないので、醪により近い状態の酒が得られるのです」

高価な機械をフル活用

目の前に広がる海があったからこそ、世界へ佐渡の酒を出す!という気持ちが昔からあった。

遠心分離機を導入して8年目。稼働率としては全国でダントツ1位とメーカーも驚くほど。1台2,000万円以上する代物だが、採算以上にいい酒を造るという蔵の意気込みの証の一つだろう。

「もちろんヤブタでの搾りも行います。同じ醪でも搾り方一つで味わいが変わる。そこにまだまだ酒質の向上部分があると自負しています。そして、それがこれからの楽しみの一つでもありますね。技術は常に日進月歩。酒造りも同じ。佐渡の酒を常にトップに掲げるべく精進するのみです」

佐渡の誇りを持ち地元と共に

ガラスタンクを導入したことで、蔵見学の際、酒造りの工程がよりわかりやすくなったと評判が!(ガラスという割れやすい材質の為、蔵人にとっては戦々恐々のアイテム)

佐渡らしさとはなにか。それは蔵のある土地に敬意を払い、そこに住まう人を愛することだという。

「蔵のある赤泊という場所は島で一番南にあります。島の中でも温暖で、じつはみかんやイチゴが収穫できるのですよ」

島の北部ではりんご栽培が行われており、佐渡は一つの島で多種多様な実りが育つ島でもある。

「佐渡は豊かな実りに恵まれた場所。その実りを先人たちは活かしてきた。それは私たちも同じ思い。ですから酒米は山田錦と、五百万石の一部を除き、佐渡で育てているものを使っています。地元の契約農家に兼業農家の蔵人と、周りは酒米を提供していただける環境がバッチリ整っており、うちが主力としている五百万石は大部分が、越淡麗においては全てが佐渡産です。」

酒米だけではない。梅はもちろん、イチゴなど、小粒などで出荷できないサイズなどを買い取り、量は少ないながらもリキュールにし地元販売するなど、地元との繋がりを第一に考えている。
「地元産の酒米や果実などがうちで酒として商品となることで、地酒っていいねと地元の方々が喜んでくれるのも励みになります。酒造りには原料、水、技術も大事だが、一番大切にするのは“人”であるという先人からの教えは、北雪酒造としてのポリシーであり、佐渡の酒としての誇りの糧です」

NOBUとのコラボで世界進出

ボトルのディスプレイが美しい接客スペース

こうして醸される蔵の酒は佐渡を飛び出し、海外でも評判が良い。世界で有名な日本人オーナーシェフ、NOBU氏とも親しく、今日では世界5大陸に彼が展開する50数店舗のレストランとホテルには必ず“北雪”の酒が用意されている。

世界中の人に「これが日本酒、これが佐渡の酒」として愛されているほど。

「『佐渡の誇りを持ち、常に満足せず、飲んでくれる人の笑顔が全て』というのが会長の口癖です。私もそう思います。満足という言葉はどこにもない。常にいいお酒を造るべく努力を惜しまない。それが北雪酒造です」

佐渡島で生まれる酒が世界中の多くの人々を楽しませていると想像すると、私たちは日本人として誇り高く、そしてありがたいものである。 蔵元が自信を持って勧める酒を紹介しよう。

取材・文 / 金関亜紀