米どころ新発田で米作りから 料理に寄り添う日々の定番酒にこだわる酒蔵『金升』
金升酒造

金升酒造KANEMASU shuzo

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PICK UP 2021

今年も酒と酒蔵の佇まいを発信していきます!

金升酒造株式会社・代表取締役社長の髙橋綱男さん

酒銘の「金升」は、蔵元の屋号。「長さは尺金で測り、嵩(かさ)は升で量るように、正確で正直なモノづくりや商売をする」との意思を示している。
尺金と升の紋印が大きく描かれたラベルは、蔵を象徴するシンボルとなっている。

日々の料理を引き立てる定番酒を

7種類の定番酒にはそれぞれに固定のファンがついている。いずれも金升酒造を代表する看板商品だ

酒単体では決して主張せず、料理をそっと引き立てる名脇役に徹する。味わいに派手さはなくとも、膨らみのある旨みと小気味よいキレ、甘みを帯びた余韻こそが「金升」の真骨頂だ。
代表取締役社長の髙橋綱男さんは「地元で採れた米と飯豊山系の伏流水を使い、この蔵の環境に逆らうことなく金升らしい酒を当たり前に醸す。それが、金升酒造の酒造り」だと言い切る。
髙橋社長の弟で杜氏を務める巌氏が中心となって醸すのは、日々の食に寄り添って飽きることなく呑み続けられる、飲み手にとってかけがえのない定番酒である。

米作りから携わる酒で新発田の魅力を表現

新発田市中心に県内外の有志で米作りから酒造りまで携わる「おれたちが仕込んだ酒」純米大吟醸

2002年、新発田市で活動する有志10人で結成した「おれたちの酒を造る会」のメンバーは、菅谷地区熊出(くまいで)で五百万石をはじめて田植えした。
以来、同会では毎年米作りから酒造りまでの一連の作業を手掛け、7月の七夕の頃に新酒をお披露目。出来上がった酒の巻紙にはその年の作業風景とともに「おれたち」の名が刻まれる。
新発田市菅谷地区は、中山間地ならではの良質な米どころ。この自然豊かな新発田の風土を一人でも多くの飲み手に感じてもらいたいと、蔵元では2016年に農業法人を設立し「越淡麗」の栽培をスタートさせた。
目指すは、全量自社栽培米で臨む酒造り。蔵人たちは夏は田んぼ、冬は酒蔵で汗を流し、良酒を醸す。

日本酒の「コト」を楽しむ場を創造

敷地内にある庭園。かつては旧新発田藩主溝口侯の御菜園(薬草園)だった

金升酒造を訪れると、1930年に建てられた蔵が奥行きをなし、かつて新発田藩主の御菜園だった中庭では木々が四季折々の表情を見せていた。
髙橋社長は「そんな蔵のレトロな風情をゆっくりと味わってもらえたら」と、週末には蔦の絡まる蔵の一部を改装した「蔵カフェ」をオープン。
金升酒造の酒や麹の甘酒、スウィーツやおつまみなどを提供するほか、地元の産品の販売などを通して、蔵のある佇まいを開放している。
この他にも、スウィーツやシェリー酒とのコラボレーションイベントを催したり蔵びらきを行ったりと、さまざまな“コト”の提案を行っている。酒蔵を舞台に広がる交流の場に蔵元が馳せる想いは、ただひとつ。
日本酒文化に触れてもらいたいという願いだ。

蔵の佇まいを感じてもらえる場を演出したい

良質な米と水に恵まれた新発田市に蔵は位置する

髙橋社長:現在地に蔵を移転したのは、1930年。三代目蔵元の髙橋耘平(うんぺい)が、水が良く、良質な米が育まれる地を求めてのことでした。
私たちはこの恵まれた環境を活かし、真摯に酒造りに取り組むのはもちろんのこと、歴史ある蔵の佇まいの魅力を知っていただくべく、さまざまな取り組みを通して足を運んでいただける蔵を目指して参ります。

蔵元が自信を持って勧める日本酒を、いくつか紹介しよう。

取材・文 / 市田真紀